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 扉を開けると、そこは学校でした。

 ――バタン。
 思わず扉を閉めて(自動扉のはずなのに音がするのは何故だろう)ジョミーは頭を振った。
(いやいやいや、落ち着け僕!ここはシャングリラだぞ、この先は操舵室だぞ!?きっとまだ寝ぼけてるんだ、アレは何かの見間違いだ!そうだ、きっとそうに違いない!)
 必死に自分に言い聞かせ、とりあえず一つ大きく深呼吸をして、ジョミーはもう一度その扉を開いた。
 予想通り、目の前に広がっていたのはいつもどおりの操舵室の風景――ではなかった。
 整然と並んだ棚のような何か。どうやらそれは靴箱で、内履きと履き替えられるよう下にすのこが敷いてある。その奥にはリノリウム張りの廊下が広がっているのが見えた。
 更にその奥、平素であれば外宇宙の星星が瞬いているメインモニターには、今は晴れ晴れと冴え渡る青空が映し出されており、まるで晴れた空の日差しが窓越しに廊下に差し込んでいるような錯覚を覚える。
 ……どう見ても、学校とか、学園とかいう風景である。
「……何だよこれ……」
 自分はいつもどおりに起きて、操舵室でゼルの小言を聞きながら船内のチェックを行い、その後ヒルマン教授の講義を受けてサイオンの訓練をする――はずなのに。
 これは一体全体何がどういうことだろう?
 ――自分は夢でも見ているんだろうか。いや、そもそもミュウとしてシャングリラに来たこと自体が長い長いリアルな夢なんじゃないだろうか。
 受け入れがたい風景に、ジョミーは思わず頭を抱えてしゃがみこむ。
 と――
「ジョミー、どうかしたのかい?こんな所にへたり込んで」
 聞き覚えのある声が、脳裏に、ではなく直接耳朶を叩いた。
 その、今では殆ど聞くことのない懐かしい声にジョミーは振り返り――
「ッ――ブ…………」
 ――目の前の光景に、言葉を失った。
「……ルー……?」
 語尾が思わず疑問形になる。
「やあジョミー、今日も良い朝だね」
 背景にキラキラのオプションを背負い、口端を少しだけ吊り上げほんの僅か目を細めてかすかな微笑を作る彼は、間違いなくブルー本人だ。
 だがそれをいつも青の間で見ているブルーと同じと言い切るには、余りにも違う点がひとつだけあった。
「……ブルー……ひとつ、訊いてもいいですか」
 なんだい、と首を傾げるブルーに、ジョミーは今一番訊かなくてはいけない事を問うた。















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