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 そんな、ある日のこと。



「やだー!!グラン・パのとこに行くー!!」
 いつものようにジョミーがカリナの所に来ると、なにやらトォニィが騒いでいます。
「お願いだからトォニィ、騒がないで、おとなしくして、ね?」
「一体どうしたの、カリナ、トォニィ?」
 ジョミーがカリナの横にやってきてニャアと一声かけると、カリナはハッとして、それからやっとジョミーに気付いて「あ、あら」と声を上げ、
「ジョミー、いつの間に来ていたの……」
「グラン・パーッ!!」
 すぐにトォニィの叫ぶような鳴き声にかき消されてしまいました。
「グラン・パ、グラン・パ、グラン・パーッッ!!うわぁぁぁん!!」
「ト、トォニィ!?」
「きゃぁっ!」
 トォニィはほとんど飛びかかるようにジョミーに抱きつくと、そのままわんわんと泣き出してしまいました。
「どうしたの、トォニィ……」
 ジョミーは困った顔でキョロキョロと視線をさ迷わせますが、トォニィはわんわんとただただ泣いていますし、カリナも困ったようにため息をつくばかり。
 ジョミーはなんとか泣いているトォニィをなだめようと、背中をぽんぽんと叩きます。
「何があったの、トォニィ?何か怖いことでもあったの?僕に教えてくれる?」
 ジョミーが優しくそう問いかけると、トォニィはなんとか泣き止んで、ぐずぐずと濡れた鼻を鳴らしながら答えました。
「ママが、ボクを遠いトコに連れてくって……ボクを、しんせきのひとにあずけるって……」
「親戚に?それは穏やかじゃないなぁ。何かあったの?カリナ、ケガでもしたのかい?」
 トォニィはぶるぶると首を振りながら答えました。
「ううん。でも……ママ、おしごとで遠くに行かなきゃいけないんだって。だからそのあいだ、ボクがひとりぼっちになるから、しんせきのひとのところにつれて行くよ、って」
「遠くに?仕事って、どのくらいの間なんだろう」
 ジョミーがカリナに訊いてみようかと振り返ると、ちょうどカリナはどこかへと電話をかけているようでした。
「……はい、ごめんなさい、少し時間が……はい、お願いします」
 どうやら、これから向かう親戚のところに連絡をしていたようです。電話を終えたカリナは、ジョミーにぴったりとくっついているトォニィを見て、
「こらトォニィ、そんなにくっついて、ジョミーまで連れて行くつもり?」
「!グラン・パと一緒に行っていいなら行く!!」
「ちょ、ちょっとトォニィ」
 耳としっぽをぷるぷるふるわせてさらにぎゅっと抱きつくトォニィに、さすがにジョミーは慌てました。
 トォニィが遠くに行ってしまうのは辛いですが、ジョミーはこの町のソルジャーなのです。町を離れるわけにはいきません。
 けれどこのままでは、トォニィはてこでも離れそうにありません。
 ジョミーは抱きついて離れないトォニィの頭をぽんぽんと撫でながら言いました。
「トォニィ、カリナの言うことをちゃんと聞かないと、悪い子になっちゃうよ。それに僕はここから離れるわけには行かないんだ」
「やだ!グラン・パと離れるなんてやだよ!知らない人のトコなんか、行きたくないよ!!」
 トォニィはいやいやをします。
 ジョミーは続けてこう言いました。















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