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 彼らのでこぼこコンビっぷりはHERO TVでも未だにたびたび茶化しつつ取り上げられるほどだ。それでも最近はだいぶ仲良くなってきたように見えていたのだが、実際はそうでもないのだろうか。
 性根が世話焼きのネイサンはずばりその辺りを探ってみることにする。

「そもそも、ハンサムはどう思ってるの? 自分のパートナーのこと」
「どう、と言われましても……」
 眉根を寄せるバーナビーに「そうね例えばガサツでロッカーの中がごっちゃごちゃになってるだとか、マヨネーズかけすぎィ! とか」とわざと水を向けてやる。
 果たしてバーナビーも話題に乗ってきた。
「そうですね……ファイヤーエンブレムさんの言うとおりですよ。ガサツですぐ物を失くしてしまうし、スケジュールも忘れてしまうし。トレーニングも適当で、折角僕が効率の良い計画を立ててもすぐに無視するし。自分勝手なんですよ、何をするにしても」
「あらまぁ」
 突如ダムが決壊したかの如く文句を吐き出し始めたバーナビーに、思わず肩をすくめる。どうやら予想以上に鬱憤を溜め込んでいたらしい。

 虎徹がたびたび「アイツと上手くやってくにはどうしたらいいかなぁ」なんてことをアントニオたちに愚痴交じりで相談しているのを知っているだけに、縮まらないどころかどんどん離れていっている二人の距離を目の当たりにしてなんだか居た堪れない気分になってしまう。

(まぁ、ハンサムの文句も理不尽ってワケじゃないし。でもこのままだとホントにタイガーが空回るだけで終わりそうネ……)
 単にライバル同士だからというならば兎も角、意味もなく不仲なのはこちらとしても困るものがある。本当に協力が必要になったとき、力を発揮できなくなる可能性があるからだ。

 これはどうにかしてアタシが一肌脱がないとダメかしらん? などとつらつら考えている間にも、バーナビーの文句は止まらない。
「こっちが作戦を立てても平気で段取りを無視して動くし、結局余計な損害を出して賠償金……。怪我だって、放っておけば良かったのに横から飛び出してきて……。勝手に身体が動いた、なんて、怪我で済んだから良かったようなものの、毎回あんな無茶していてどうにかなるはずがないんですよ」
「あら、あら」

 ……何だか、先ほどよりほんの僅かだが論調が緩んでいるような気がするのは果たして気のせいか。
 バーナビーの愚痴は更に続く。

「口では軽い怪我だなんて言って、医者に見せたら重傷だっていうじゃないですか。虚勢ばかり張ったところでどうしようもないことをあの人はわかっていないんですよ。さっきだって安静を言い渡されているのにトレーニングセンターに顔を出していましたし……安静の意味をわかっているのか」
 ため息。

 気のせいではなく、やはり論調が緩んでいる。というか口調こそ厳しく責めているように聞こえるが、その内容は理不尽に責めているわけではない。
 不養生を怒ってこそいるが、要約すると――それってつまり「無茶をする相棒が心配」ってこと? と内心で呟く。

 ネイサンが色々と思案している間にもバーナビーの愚痴ともつかぬ話は更にオフィスでの苦情へと発展していた。
「――書類は山積みにしたままで整理もしないから、どれが未処理だかわからなくなって結局期限を過ぎてしまったりするし。それでこっちまでとばっちりを受けるのは癪なのでわざわざ整理して渡せば、渡した先からまたぐちゃぐちゃにしてしまうし。それで今度はアレがないコレがないと騒いで、結局僕も探す羽目になって余計な時間を取らされてしまうし、しかも全く学習しない。いい加減にして欲しいと毎回言っているんですが――」
「……」

 何やら聞いているうちに「熟年夫婦の愚痴」という言葉が脳裏をよぎったのは何故だろうか。どう考えてもバーナビーが勝手に世話を焼いているような気がする。




















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