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――そこには、青年が一人、立っていた。
年の頃は少年より少し上ぐらいであろうか。子供と呼ぶには精悍だが、青年と呼ぶには幾分か幼さの残る――子供と大人の狭間にいるのであろうその青年は、その外観も相俟ってどこか中性的だ。だがそれでも女性と思わなかったのは、彼自身の持つ雰囲気のせいだろうか。月光のような優しさと儚さではなく、陽光のような厳しさと力強さを感じさせる雰囲気を、彼は持っていた。
太陽の光をそのまま糸にしたような金色の髪に、健康的な白い肌。そして、春の草原を思わせる綺麗な翠の瞳は、一度目にしただけで忘れられなくなるであろうほどに印象的であった。
陽光の化身がいたら、きっとこんな青年なのかもしれない、と、少年は無意識のうちにそう思った。否――彼は陽光の化身なのだと、そう思っていたことを、知っていた。
暗闇の季節になる前に、ほんの刹那だけ姿を見せた陽光の化身。
この辺りでは見ない顔、だが少年はその顔に覚えがある事を知っていた。
どこかから迷い込んできたのだろうか?或いは、この蝋燭の灯に惹かれてやってきたのか。だとしたら――
青年は暫く何かを探すように辺りを見回していたが、やがてこちらに目を留めると、驚いたように小さく目を瞠った。
「――」
確乎(じっ)とこちらを見つめるその青年に、少年は柔らかく微笑みを向けた。
「前夜祭(ハロウィーン)は、これからだよ?」
だからまだお菓子は準備できていない、と少年は続けた。彼が魂のケーキを乞いにきた訳ではないだろうことは分かっていたが、だからと言って他にかける言葉も思いつかなかった。
悪いモノを払う灯に惹かれたのであれば、彼は悪いモノではないのだ。ならば、その魂は迎え入れられるべき英霊なのだろう。
青年は突然声をかけられたことに驚いたのか、一瞬きょとん、とした表情を浮かべると、すぐにふっとその顔を曇らせた。
酷く嬉しそうなくせに、どこか泣きそうな――一言では言い表せない複雑な表情(カオ)。
やがて青年はためらいがちに小さく口を開いて、言った。
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