「あ、痛っ……」
「どうした?」
手を押さえた帝人に静雄は首を傾げる。
「なんでもないです。ちょっとささくれが出来ちゃっただけで」
苦笑しながら帝人がひらひらさせた手を見れば、爪の縁にうっすら血がにじんでいる。
「大丈夫なのか?」
「このくらい舐めておけば治りますよ」
少し心配そうな静雄にそう言って含もうとした手を、背後から捕られる。
「駄目駄目、帝人君。人の口の中は雑菌だらけなんだから」
「い、臨也さん!!?」
突如背後から現れた人物に帝人は驚きの声を上げた。
隣では静雄が臨戦態勢に入っている。
動かないのは臨也が帝人の手を握っているからだ。
今攻撃すれば間違いなく巻き込まれる。
「臨也!テメエ離れやがれ!」
「えー、何でオレが静ちゃんに命令されなきゃならないのさ。それより帝人君。オレが消毒してあげるよ」
と言いながら臨也は帝人の指を自分の口に銜えた。
「いいいいいいい臨也さん!!?た、たった今人の口は雑菌だらけだって……!?」
混乱しまくる帝人の指を軽く舌でくすぐると臨也はすぐに口を離した。
「大丈夫、オレ歯を磨いた後に口内リンスもしてるから」
「僕だって歯は磨いてますよ!」
叫ぶ帝人の手を臨也はさっと放してたっていた場所から飛びのいた。
と同時にそこに何か箱のようなものが降ってくる。
驚きながらも帝人はそれが何であるか正確に理解した。
「イ〜ザ〜ヤぁ〜!!」
鬼のような覇気を背負っている静雄がじりじりと臨也との間をつめる。
「やだやだ、静ちゃんてば相変わらずキレやすいんだから」
肩をすくめると帝人に手を振って身を翻した。
「じゃあねー帝人君。また会いにくるよ」
「二度と来られなくしてやる!!」
その言葉を残して走り去る臨也を、静雄も追おうと走り出して、ふと帝人を目にして足を止める。
「し、静雄さん?」
怒っている(臨也に向けてだが)静雄に見つめられて帝人は思わず身を引きかけた。
一瞬早くその手を静雄が捕らえると指先をぺろりと舐める。
「へ!!?」
「ノミ虫菌の殺菌だ!」
それだけ言い残して、再び静雄は走っていってしまった。

「え、ええと……」
二人の男に指を銜えられた、ある意味非日常を気にすべきか、自分の指を通して行われたありえない二人の間接キスを気にすべきか分からなくなって、帝人はこの件については何も考えないことにした。
「あっ、いた…」
そしてまた痛み出したその指を自分で口に含んでしまい、今度こそ本当にどうしていいのか分からなくなった。




END






湖朱萌蒼地様よりいただきました、ありがとうございますv


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