昼寝にはもってこいの陽気である。
「こういう日は藤君じゃなくても寝てたくなるなー」
とはいえ本当に寝るわけでもなく、ぼ〜っと呟いてみた。
噂をすれば、とはよく聞くが本当だとは思わなかった。
ふと近づいた影に見上げれば、やや眠そうなの美少年。
「ずいぶん良い所知ってるなアシタバ、寄りかかってもいいか?」
「え?べ、別に構わないけど」
「あ、そう?」
まさか本当に許可が下りるとは思っていなかったのか、少しばかり驚いて見せた後、だが宣言通りに背中合わせに寄りかかってきた。
(寄りかかるって言うより、圧し掛かられた気がする…)
そうは思いながらもそれほど重いわけでもなく、背中の温かさは少し心地よかったので気にしないことにした。
「藤君て寝るの好きだよねー」
「まあな、何も考えなくていいし」
返された言葉に、何か含まれるものがあるのを感じた。
アシタバに、ではない別のところにだが。
「ふーん……」
でも其れは問う必要のないものだと思ったので、頷くだけでながした。
「………………」
「………………」
「………………」
「………………」
「で?」
「うわっ!」
暫く(10分以上)の間を空けて突然掛けられた声に、アシタバはびくりと跳ねる。
「…何でそんなに驚くんだよ」
逆に驚いた、という声で問われてしどろもどろに返事をする。
「いや、だって寝てると思ったから…」
「なんだ、だから黙ってたのか」
無言だった理由を理解して気が抜けたように呟く声に、逆に疑問になって問いかける。
「寝るんじゃないの?」
だから寄りかかるんだと思っていた。
「お前と居るときに寝る必要はねえよ」
けれど返ってきたのは予想外の答え。
「えっと…?」
「アシタバは馬鹿正直に優しいイキモノだからな」
素直に疑問を口にすれば、そんなことを言われた。
「それは、馬鹿にしてるの?褒めてるの?」
「両方」
即答。
馬鹿にもされているということだ。
「ひどい…」
「でも俺は好き」
「えっ!?」
またもや驚いて声を上げるが、今度は返事がなかった。
かといってどういう意味なのか聞くのはすごく躊躇われた結果、アシタバも黙り込んだ。

温かいと感じた背中が、少し熱くなった気がしたが、その事実にも理由にも気づかぬほど混乱してしまった春の午後だった。




END






湖朱萌蒼地様よりいただきました、ありがとうございますv


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