「ジョミー」
「ッうわっっ」







○寝子に悪戯○















 ガツッ。

 気付けば目前に顔。
 目を開けた瞬間まず見えたその端正な顔に、思わず後退ろうとしてジョミーは背もたれにしていたベッドに思い切り頭をぶつけた。
「〜ッ痛ー……っ」
「ああ、大丈夫かい、ジョミー?」
「だっ、大丈夫……」
 心配そうに覗き込んでくるソルジャーから逃げるようにしてずりずりと移動しながら、ジョミーは声にならない声を絞り出す。
「うう……もしかしなくても僕、寝てた……?」
「それは気持ち良さそうにね」
「ううう」
 なんだか情けなくなって、ジョミーはひざに顔を埋めた。
 やっぱり、上手くいかない。

「ジョミー、諦めることはない。さあ、もう一度」
「……わかった……」
 ソルジャーに促されて、ジョミーはしぶしぶ顔を上げる。
 目前にいるであろうソルジャーの方を見ないように努めながら、指を組み、目を閉じ、意識を集中する。

 少しずつ、ゆっくりと。

 こうしていると、だんだん、世界に散らばる沢山の意識の破片が『見えて』くる。


 そのうちの、朧に形のある一つに更に意識を集中させると、ゆらりゆらゆらたゆたいながらそれは意味あるモノへ変じていく。

 ――他のミュウと意識をつなぎ、知識を共有する訓練だ。
 シャングリラに来て日が浅く、またミュウとしての力にも目覚めたばかりのジョミーは、未だに思念(サイオン)での意思疎通を不得手としていた。
 だから思念(サイオン)を操る訓練の中でも特にこれには力を入れているのだが……

 辺りが静か過ぎるのが悪いのか、はたまた座ってしかも目を閉じてしまうのが悪いのか。
 集中し始めた途端、またもやが掛かったようにふわふわと意識を睡魔が遮ろうとする。
 折角形を成し始めたモノがまたもやもやと崩れていく。

(……だっ、駄目だ、駄目ッ!)
 慌てて首を振り、覆いかぶさるもやを払う。
 また眠ってしまっては、折角訓練に付き合ってくれているソルジャーに申し訳が立たないではないか。

 それでなくともこうやって、一緒に居られることなど数少ない。
 ソルジャーの眠りは深く、一度意識を手放してしまえば次に目醒めるのはいつになるかわからない。
 だから、せめて今、心を繋げられるこの時に、自分からソルジャーの心に飛び込んでいきたい。


 そして、伝えたい。


 気張って大きく深呼吸をする。と、不意にふわりと柔らかな手が頭を撫でた。
 今ここにいるのは二人だけ。なら、この手は。

 ……ソルジャー・ブルーの、手。

 手が、触れて。

 ようやく静寂を取り戻し始めた心臓が、どくんっ、と跳ねた音が聞こえた、気がした。

「気負わなくていい、ジョミー。肩の力を抜いて、目を閉じて、意識の『目』を開くんだ」
「わかって、るッ……」
 口ではそう言いつつも、感情はどうにもならないのがジョミーだ。
 一度跳ねてしまった心臓はまるで冷静さを忘れてしまったようにどくどくと鼓動が止まらない。

(……お、落ち着いて、落ち着くんだっ……)

 必死に自分に言い聞かせ、一度全ての情報を遮断する。……しようと、した。

 その途端に流れ込んできたのは、抗いようのない、力。

 意識が拡散する。

 集中、しようと、して、いるのに。

(……駄目、だ……)

 心地よい睡魔が、襲ってくる。


 抗えない眠りの波、たゆたう意識の奥底へ、またジョミーは呑まれていった。





 ――すっかり睡魔の虜となってしまったジョミーの頬に、ソルジャーはそうと手を伸ばす。
 普段(いつも)なら後退って逃げられてしまうけれど、今は全く微動だにしない。


 触れる。
 柔らかな肌。
 病的な白ではなく、汚れてもいない、生命に満ち溢れた色彩(いろ)

 ジョミーは気付いていないだろう。集めている思念のその片鱗に、睡魔の種が潜んでいるなど。

 ソレを潜ませたのは、誰あろう、自分だ。
 そんな子供の悪戯染みた事を、よもや訓練に付き合っている当人が仕出かしているなど、ジョミーは考えてもいないだろう。

 わかっている。それはあまりにも子供染みた悪戯。

 わかっている。それでも、触れたいのだ。
 その頬に髪に肌に触れて暖かさを感じたい。どうしようもない、欲求。
 いつでも、――惹かれているから。


「――う、……ん……」

 夢でも、見ているのだろうか?

 例え眠っていても、その心は閉ざされることなくまっすぐに、気持ちを伝えてくる。
 ジョミーがソルジャーのことをどう思っているかも、勿論。
 それが憎からざる感情であることも、恐らく本人が自覚している以上に意識してしまっているが故に、豊かな感情がそれを受けてたやすく波打ってしまうことも。

 でも、だからといって触れるのを、傍にいるのを止められるはずもない。
 制御が利かないほどに愛おしく想っているのだから。



 睡魔とともに潜ませている、ジョミーにだけ向けた、ジョミーへの想い。
 ――さて、それに彼が自力で気付くのはいつになるだろう?


 まるで猫のように丸くなって眠ってしまった少年の頬に、ソルジャーは気づかれぬよう、そっと唇を落とした。










END





うーーーーーーーーーーーーーーん……(-"-)
微妙だ。果てしなく微妙だ。
らぶらぶ〜vの、甘甘バカップルにしたかっただけの筈なのに、気付いたらソルジャーが華麗に暴走始めました(滝汗)
多分止まらないでしょう。アタシはただヘンな方向へ行かないように祈るのみです(祈るだけかよ)


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