嫌い、嫌い、でも





















「ブルーなんか、嫌いだ」
 ぽつり、呟いた言葉は思う以上に薄闇に響いた。
 柔らかなベッドに今は半身を起こした彼が、ゆるりと首を傾げる。


 優しい、瞳。
 今、映っているのは、不機嫌で可愛いげのない、表情(カオ)


 嫌いだ。


「悲しいことを言わないでおくれ、ジョミー」

 手が、伸びてくる。

 あの手に囚われたら、抱きしめられたら、逃げられなくなる。
 だから、囚われる前に、逃げる。

 虚しく空を切った手から再びこちらへ向けられた視線を、受け止められずに目を逸らして。


「まだ怒っているのかい?」
「……」

 あきれたようなため息が聞こえてくる気がして、逃げるようにベッドの横に顔を埋める。
 真っ白なシーツはそれでも優しく身体を受け止めてくれた。

「嫌いだ」

 くぐもった声。

「ブルーなんか、嫌いだ」
 もう一度、繰り返す。
 まるで自分に言い聞かせるように。


「自分勝手だし」

「我がままだし」

「えらそうだし」

「……綺麗、だし」

「すごく、……やさしいし」


 重ねる言葉に情けなさが増す。



 ――わかってる、本当に我がままなのは、自分。



 今だって、きっと身を起こしていることすら辛いはず、なのに。
 こうやって目を逸らして、いやな言葉を吐いて、逃げて、



 ――待ってる、なんて。



 その手がここまで伸ばされてくるのを、
 その声がここまで届けられるのを、

 求められる事を、待ってる、だなんて。


 一緒に居るだけでいい、なんて殊勝なことは言えなくて。
 それだけじゃ、満足できなくて。
 声を聞きたくて、触れたくて、――その瞳で、見つめて欲しくて。



 ……けれどそれが自分のだけじゃないことを確認したくて。



 嫌いなのは、そんなわがままな自分、

 だから、

「……ブルーなんか、嫌い、だ」

 嫌いなはず、ない、けれど。

 こんな自分が、
 こんな自分をさらけ出させる、ひとだから、

「きらい、だ」

 うそつきな心を諌めるように。

 ただひたすらに繰り返す。

「嫌い、嫌い、だ」
 なのに。



「嫌いに、なれない?」

 ――頬が上気するのが、自分でわかった。

「……ッ、また勝手にッ!」
 突っ伏していた顔を勢いよく上げた先にあったのは、

「読まれたと、思った?」
「――え」
 悪戯が成功した子供のような笑み。

 ……からかわれた、のだ。



「――っ……ブルーなんかッ」

「僕は」



「好きだよ、ジョミー」
「…………っ」

 曇りのないルビーの瞳に、真っ直ぐ見つめられて。
 伸ばされた手、から、

 逃げられるわけが、なくて。



「……やっぱり、嫌いだ」

 つぶやく。

 けれど、



「聞こえないよ」

 楽しそうな声。



 もう一度呟いたその声は、埋めた胸の中に吸い込まれて消えた。



 嫌い、嫌い、でも



 好き。















((((((゜д゜;;;;;;;)))))))))))
…短いなぁ。また最初とは趣旨が変わったなぁ…

……ああああああもぉぉぉぉぉぉ……orz


BACK





SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送