きっかけは文化祭でした。



「ダメよアタシがやるって言ってるでしょ!!」
「何言ってるのよ、私よ私!!」
 クラスの女子が言い争ってるのをボクたちは遠巻きに見ているしかできない。
 というか、怖い。となりで美作くんは機嫌悪そうにぶつぶつ何か言ってるし。
「ったくまた藤かよ……あのヤロー……」
「俺は美っちゃんがやればいいと思うんだけどなぁ。」
 ……いや、流石にそれはどうかな……と思ったけど、言わないでおく。
 きっかけは文化祭の出し物決めだった。
 ボクたちのクラスは劇をやろうということになって、今日はその配役を決めていたんだ。
 王子役は女子の満場一致で藤くんに決定(ちなみに本人はその場にいない)、じゃあお姫様役は誰がやるんだ、という話になって女子がモメだした。
 台本を見ると、キスシーンはないけど姫抱っこがあるらしい。それを巡ってクラスの女子の間にはいまや凄まじい険悪な雰囲気が漂っている。
 ……この台本考えたの誰だろう。
 それにしても、相変わらず藤くんは人気者だなぁ。
 でも、ずっとこの状態は流石にまずいんじゃないかな……
「……だ、誰か止めないと……」
 ……言ってから、しまった、と思った。
 こう言う時は大体言い出した奴が、
「アシタバ、お前止めてこいよ」
 ……こう言われるんだ……。
「ええっ!?あ、あれを!?」
「そーだよ決まってんだろ、アレとめねぇと他の配役が決められねぇんだからよ!」
「ちょっ、まっ……」
 抵抗する間もなくボクはその場から蹴りだされた。……ひどいよ皆……
「あ、あの……」
 一応努力はしてみることにする。だけど
「だからアナタじゃ無理って言ってるでしょ!靴のサイズが合わないってば!」
「衣装なんか後からどうにでもなるわよ!」
 ……無理……誰か助けて。
 と、

「うるせぇなぁ。外まで聞こえてんだけど」
 藤くんが保健室から帰ってきたみたいだ。た、助かった……!
 教室の入り口でさっそくうんざりといった表情をしている藤くんに美作くんが詰め寄った。
「ああン?元はといえば藤、テメーのせいだろうが!」
「はァ?」
「ふ、藤くん助けて……!」
「なんなんだよいきなり!!」
「こ、これを……」
 僕は持っていた台本を手渡した。
「ンだこれ……台本?は?王子?聞いてねーぞ」
「たりめーだろ女子が勝手に決めたんだよ」
「俺は美っちゃんが……」
 いやだからそれはどうなの!?
 その間にも藤くんはぱらぱらと台本を流し読みすると、
「……ひめだっこねぇ……」
 すごく厭そうに呟いた。
 女子のケンカは続いている。
 藤くんはそれを見て、ものすごく厭そうな顔をして、それから何故かボクを見て、その瞬間視界から消えた。
「え?」
 そして、
 ふわっ
「え!?」
 足が浮いた。
「えええええ〜!!!?」
「!!!?」
「きっ……きゃああああ!!!?」
 女子の悲鳴が聞こえる。
 ボクは……何故か、藤くんに姫抱っこ、されていた。
「えっ、ちょ、藤くんっ、」
 かっ、カオが近いっ!!
 (後から思い返してみれば、そんなにカオなんて近くなかったハズなんだけど、そのときはすごく近かった気がしたんだ。なんでだろう)
「っ、お前暴れんな」
 そんなこといわれても!!
 なんでボク藤くんに姫抱っこされてんの!?
 ボクは男だよ!?
 藤くんはものすごい渋い顔をして、それから
「うわたっ!?」
 ボクは思いっきりしりもちをついた。
「いっ……痛〜……」
「はー。無理無理」
 藤くんが皆に聞こえるように言う。
「コイツより五キロは軽くないと、持って喋るとかフツーに、無理」
「は!?」
 途端に、女子の目の色が変わったのが……わかった。
「ちょっとアシタバ!!アンタ体重いくら!?」
「えっ!!!?ちょ、ちょっと」
「教えなさいっっ!!!!!!」
 ひぃー!!!!!

 ふぁ、とひとつ大きくあくびをしてまた寝に戻ろうとしたところを、美作が止めた。
「藤お前本気でやるつもりかよ……?」
「ああ?」
 藤は心底どうでもよさそうといった表情の上に、にやりと小さく笑みを浮かべる。
「やんねーよ。アレはせいぜいやってもアシタバだけ」
「ふーん、そ、そうかよ」
 気のなさそうに手を振って教室を去っていく藤を見送って……美作は首を傾げた。
「……んん?」

 ちなみに。
 アシタバが姫抱っこされたとき、本好が小さな声で「いいなぁ」とか言っていたことは秘密である。















……や、アシタバくんはあんまり肉ついてないから軽そうだなって思っただけで(笑) アレで60kgとかあったらどうしような(ないない) あと本命二人以上に本好くんがガチすぎてすみません。




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