『またァ?』
 子供特有のキーの高い、可愛らしい声とともにモニター越しの少女の眉尻が不機嫌につりあがるのを見て、虎徹は間髪いれずに「ごめんッ!!」と頭を下げた。
「ほんッと、ごめん!! 急な仕事が入っちゃってさァ〜、どーしても抜けらんなくって」
『……もーいーわ。いつものことだし。私も用事入れちゃおっと』
「よ、用事ってまさか、カレシとか言わないよな!?」
『友達とフィギュアのエキシビジョン見に行くのっ! もう、ヘンな心配しないでよ』
「と、友達かあ……。……いやいや心配するよ〜、パパの可愛い〜楓がヘンな男に取られたりしたら」
『褒めてくれるのは嬉しいけど、そういうお父さんはとりあえず顔だけでもちゃんと洗ってよね!』
「あ、バレちゃった?」
『そんなのバレバレだよ! もう、だらしないトコ見せるぐらいならせめて音声通話にすればいいのに』
 呆れ声の楓に「ゴメンゴメン」とまた謝り倒しながら、虎徹は数年前の出来事を思い出していた。
 楓はきっと覚えていないであろう、ずっとずっと昔の話。



『……やっぱり、帰って来れないのかい』
「悪ぃ」
 ため息交じりの母親の言葉に、虎徹はそれだけをぼそり、と返した。
『……アンタが選んだ仕事だ、アンタが誇りを持ってやってるのも知ってる。だけどアンタはいつも無茶ばかりするから、こっちは心配なんだよ』
「……ホント、悪ぃ」
 電話越しで相手の顔は見えないが、きっとひどく心労のたまった顔をさせているだろう、ということだけは声音だけでもひしひしと伝わってくる。
 ここ最近シュテルンビルトでは凶悪事件が頻発していた。強盗や誘拐、トレイン・ジャック。しかも犯人のそのほとんどがNEXTであるらしく一般の警察では太刀打ちできない。そのため同じNEXTであるヒーローたちはここ数日休む間もなく活動を余儀なくされていた。
 受話器からまた、はぁ、という重いため,曼、が聞こえてくる。
『本当に、無茶だけはしないでおくれよ。昨日も見ていてこっちは冷や冷やしたよ』
 自分の行動はHERO TVを通じて全て伝わっている。いくら能力(ハンドレット・パワー)を使って肉体強化していても無茶をすれば怪我もする。ましてや相手もNEXTだ。いつ何があるかわからない。
「わかった、気をつけるよ。……それで、かーちゃん、あの、楓は」
 おずおずとそう切り出すと、沈痛な声が受話器から返ってきた。
『……まだ、スネてるよ』
「そうか……」
 小さく呟いて、虎徹も思わずはぁ、とため息をっいた。
 楓は虎徹の一人娘だ。だが妻を喪い、自分ひとりでは面倒を見ることができないため、今は母親の元で面倒を見てもらっていた。
 それでもやはり寂しさは拭えないのだろう、ことあるごとに「いつかえってくるの?」と尋ねる楓に、虎徹は次の休みこそは帰ると約束していた。
 ――帰ると約束していたのに。
 事故と犯罪者は虎徹の都合など考えてはくれない。結果またも突如発生した事件にヒーローたちは出動を余儀なくされ――虎徹は楓と交わした約束をふいにしてしまった。
 その結果、またお父さんが約束を破った、と言って楓はすっかりスネてしまったのだ。
 虎徹は電話の傍に置いてある写真立てを手に取った。収めてあるのは家族三人で撮った写真だ。
 まだ元気だった頃の妻と、生まれて間もない娘がこちらに笑顔を向けている。
 ――きっと、楓はこの写真から更に大きく愛らしく成長しているのだろう。
 もう数ヶ月も顔を見ていない。最後に顔を合わせたのは果たしていつだっただろう。
『たまにはちゃんと帰っておいで。でないと楓がアンタの顔を忘れちまうよ』
 ため息交じりのその声が、やけに重々しく虎徹の胸に響いた。



 少女は泣いていた。実際に涙を流してはいないが、心の中で泣いていた。
 寂しいと言って、泣いていた。
 それは誰にも――少女本人にも気付かない、小さな小さな心の声だったのだけれど。



 お父さんの顔が、どうしても思い出せない。
 ところどころは覚えているのだ。自分に向けられる優しい目や、笑ったときの口元。頭を撫でる大きな手。
 だけど、ちゃんと顔を思い出そうとすると、とたんにどろどろと溶けて消えてしまうのだ。
 まるで波にさらわれる砂の城のように。
「――あれ、お前なんで何も描いてねーの?」
 突然掛けられた声に楓はびくりと身を震わせた。
 恐る恐る画用紙から顔を上げると、隣の席に座っていたクラスの男子がこちらを不審そうに覗き込んでいる。
「べ、べつに……なんかうまく描けなかったから消しちゃったの」
「ふーん……」
 その少年はさして興味もなさそうに頷いて、また自分の画用紙へと視線を戻した。
 楓もつられてちらり、とその少年の画用紙を覗く。そこには紙いっぱいに描かれた男の人がにっこりと笑顔を浮かべていた。
 お父さん。
 再び自分の手元に視線を戻す。
 画用紙は真っ白なままだ。
 どうしても、お父さんの顔が思い出せない。
 ちら、と顔を上げる。アイボリーで統一された教室。正面の黒板には白いチョークで『父の日にお父さんをかこう』と記されている。様子を見守る先生は初老の女性だ。参考にもならない。
 カラーンコローン……と、授業の終わりを告げるチャイムが鳴った。
「描き終わらなかった人は宿題にしますから、来週までにお父さんの顔を描いて持ってきてくださいねー!」
 先生の声にはーいと生返事を返しながら、楓はうずくまるようにひざを抱えた。



 お父さんの顔が、どうしても思い出せない。
 ところどころは思い出せるのだ。立ち上がったときとても背が高いこと。片腕で自分を軽々と持ち上げてくれること。
 だけど、ちゃんと顔を思い出そうとすると、影になったように真っ黒になって消えてしまうのだ。
 家に帰って居間で画用紙を広げながら、楓はうーん、と小さく喰り声を上げた。
 画用紙は変わらず真っ白なまま。クラスの男子が描いていたように紙いっぱいにお父さんを描けばいいとわかっていても、どうしても手が動かない。
 真っ白なのだ。お父さんの思い出、記隠、全部が真っ白で、もう思い出せないのだ。
 例えば休みの日にお父さんとお母さんと遊園地に行ったとか、ピクニックに出かけたとか。
 そういった思い出が、最近はほとんどない。
 うんと小さい頃、お母さんがいた頃は色んなところに連れて行ってもらった。公園で一緒に食べたごはんや、遊園地で転んで泣いてしまったときに撫でて慰めてくれたこと。それは覚えているけれど、その時のお父さんとお母さんの顔がどうだったか、どんなことを話したのか、もう、ほとんど覚えていない。
 そして――最近は一緒に出かけるどころか、顔を合わせることも少なくなってしまった。
 決まってお父さんは言うのだ。「お仕事が入ってしまった」と。
 でもお父さんは仕事が何かを教えてくれない。とても忙しくて大変で、でも人のためになる仕事だとおばあちゃんは教えてくれたが、けれど幼い楓にそれを理解するのはとても難しかったのだ。
 彼女が理解しているのは、今ここにお父さんがいないという事実だけ。
「――おや楓、何を描いているんだい?」
「!」
 急に声を掛けられ楓は慌てて振り返る。おばあちゃんが楓の、まだ何も描いていない真っ白な画用紙を覗き込んでいた。
「あっ、あのね! 学校のしゅくだいなの! あしたまでに描かなきゃいけないから!」
 だから放っておいて、と言外に告げる。おばあちゃんは「そうかいそうかい。それじゃ、晩御飯になったら呼んであげるからね」とだけ言って去っていった。
 ほう、と小さく息をついて、楓は改めて真っ白な画用紙を睨む。
 描かなければいけないのはお父さん。でも最近のお父さんを楓は見ていない。覚えても、いない。
 ――それなら。
 がたんと音を立てて、楓は立ち上がった。



「――ほらよ、お疲れ」
「や、すんません」
 日も沈みかけた夕方。
 ヒーロースーツから私服へと着替え、上司であるベンとともに自身が勤めるビルを後にする。
 ベンはその辺りにあった自動販売機で適当に購入したコーク缶を虎徹へ投げ渡した。彼からのささやかな労いだ。
 今日発生した事件は比較的大事にならずに済んだ。怪我人もなく、ワイルドタイガーもそこそこカメラに映ってそれなりにポイントを獲得できた。
 尤も、彼が活躍したことによる広告効果よりも『正義の壊し屋』の器物損壊による賠償のほうが高くつく――というのが現実なのだが。
「今日はさっさと帰りな。ここ最近ずっと出っぱなしだからよ、いい加減疲れも溜まってんだろ」
「ベンさんは、どうするんスか」
「俺はお前らが活躍した後の方が忙しいんだ」
 なぁにこれからが俺の仕事さ、と腕まくりしてみせるベンに虎徹はすまなそうに笑い返す。彼の仕事というのは、要するに自分が壊したモノの弁償だ。
「――なんか、手伝いましょうか」
「うん? やーまあそう言ってもらえンのはありがたいが……」
 申し訳なさにそう切り出したところで、ピピピ、と虎徹の携帯が着信を知らせた。
「っと、ちょっとすいません」
 一言謝って携帯を見る。着信は母親からだ。ちらりとベンに目配せして電話に出る。
「もしもし、どうした母――」
『もしもし!? 虎徹、アンタ楓がどこ行ったか知らないかい!?』
 その一言で虎徹の顔色がさっと変わった。
「――いなくなったのか!?」
『さっきまで居間で宿題やってたんだけどね、気付いたらいなくなってて! 友達のところに電話してみても知らないって――』
「――わかった、こっちで俺も探す! かーちゃんは楓が帰って来たときのために家にいてくれ!」
 乱暴に通話を切る。そんな虎徹の様子にベンが1至詩そうに声をかけた。
「なんかあったのか」
「楓が――娘が、いなくなっちまったんです」
「なんだって! そりゃ大事じゃね一か、捜すんだろ、俺も手伝うぜ」
「――ありがとうございます」
 不安と焦りがありありと滲む顔を至ませて礼を言う虎徹に、まだ幾分か冷静なベンが次にやるべき行動を整理する。
「とりあえずまず警察に連絡して……、娘さんの行きそうなところとか、心当たりはねぇのか」
「楓の……」
 問われて、楓が行きそうなところを考えてみる。友達のところは連絡したと言っていた。その他は――考えるが、思い当たらない。普段自分の娘がどうやって過ごしているかすら、思い出すことができない。
 離れ離れに暮らしていること。その現実が今ひしひしと突き刺さる。
「――くそっ」
 毒づく虎徹を諭すようにベンが肩を叩く。
「焦るな虎徹。焦ったってどうにもなんねぇ。ひとまず地道に心当たりを探すしか――」
「――パパーッ!!」
 突然飛び込んできた声に、虎徹とベンは反射的に顔を上げた。
 虎徹の目が大きく見開かれる。
「ッ、楓!?」
「パパッ!!」
 驚きを隠しきれない表情で、飛び込んできた小さな身体を抱きとめる。
 それまで我慢していたのだろう、わんわんと声を上げて泣き出した楓を必死にあやす虎徹の隣で、ベンも驚きに目をまん丸に見開いていた。
「楓、お前、ここ、どうやって」
「お前に会いに来たんだとよ」
 突如掛けられた声に顔を上げる。そこにいたのは意外な人物だった。
「ロ……アントニオ! お前、なんで」
 そこにいたのは虎徹の友人であり、同僚でもある――ロックバイソンこと、アントニオ・ロペスだ。
 アントニオは厳つい顔に渋い表情を浮かべながら、「何でって……」と困ったように言葉を探す。
「偶然見かけたんだよ。中央ターミナルのバス停に迷子がいるってんで迷子センターにでも連れて行ってやろうと思ったら、それが楓ちゃんだったんだよ」
 驚いたぜ、と苦笑しながら肩をすくめる。
 虎徹とアントニオは高校時代からの知己だ。当然虎徹の娘である楓のことも知っているのだが、彼もまさかシュテルンビルトの街中で、しかも一人きりでいるとは思いもしなかったのだろう。
 虎徹は泣いている楓の頭を撫でてやりながら、改めて尋ねる。
「楓、お前一人で来たのか?」
 こくん、と楓が頷いた。
 確かに、実家には虎徹が住んでいる家の住所は知らせてある。恐らくその住所を頼りに路行く大人に訪ね歩いたのであろうということは想像がついた。
「おばあちゃんには言わなかったのか?」
 またもこくん、と頷く。
「どうして」
「――おい、虎徹」
 若干責めるような口調になった虎徹を諌めようとアントニオが手を伸ばす。だがそれを横手から伸びてきたベンの手に止められた。
「任せてやれ。アレは、親の仕事だ」

「――なあ楓。どうして黙ってパパのトコ来たんだ?」
 楓はまだしゃくりあげている。
 虎徹はそれ以上喋らず、黙って彼女が話し出すのを待った。
「……く、だい……」
 ようやく楓が途切れ途切れに言葉を紡ぐ。
「しゅく、だい……だった、から」
「宿題?」
 こくん、と頷く。
「あの、ね、ちちのひ、に、おとうさんの、にがおえ、か、かきましょうって、い、いわれて、……でも、パパの、か、かおをね、おもいだせなくって」
 しゃくりあげながら懸命に理由を話す楓に、虎徹の顔が歪んだ。
「……そうか。宿題か。じゃあ、おばあちゃんに話さなかったのは?」
「ま、まえに、パパにあいたいって、いったら、……か、かなしそう、だったの」
 涙でぐちゃぐちゃになった頬を手の甲でごしごしとこする。そのまま目をこすろうとするのを止めて、持っていたハンカチで顔を拭ってやる。
「……だ、だからね、おばあちゃんかなしくなるの、いやだった、から」
「そうか……ここまで一人で、良くがんばったな」
 涙と鼻水を拭ってやりながら虎徹がぽつりと呟く。
 楓はずっと会っていない父の顔を見るためにやってきたのだ。それも祖母に余計な心配をさせるまいと、一人で。
 彼女を預けている実家はここから随分と離れたところにある。初めての都会、見たこともない景色や人々の群れ。さぞかし大冒険だっただろう。
 ようやく涙も落ち着いてきて幾分かすっきりした顔に、虎徹は今度は諭すような口調で告げた。
「でもなあ……楓、一人でいなくなったら、俺もおばあちゃんも心配するんだぞ」
「しん、ぱい?」
 そう、と虎徹は大きく頷く。
「楓がなんにも言わないでいなくなったら、どこに行ったのかって心配するんだ。楓だっておばあちやんやお父さんがいきなりいなくなったら、嫌だろ?」
「やだッ!!」
 びくりと肩を震わせて、虎徹に抱きつく。
 虎徹は微笑ってその小さな肩に言い聞かせるように告げた。
「じゃあ、今度から何も言わないで出かけたりしない。パパと約束しよう。な?」
 言いながらそっと小指を差し出す。だが楓はその指をじーっと見つめたまま、自分は手を出そうとしない。
「楓?」
「……でも、パパ約束破るもん」
 ぼそっと呟かれた言葉に、だが虎徹は何かがぐさっと突き刺さるのを感じた。
「いや、その、あれはなぁ……」
「約束破るもん」
「……」
 じっと責めるような目で見る楓に思わずたじたじになる父親。今度は虎徹が責められる番だ。
 四方八方に視線を逸らしながら、虎徹は何とか場を収める手立てを考える。
「あー……楓、この間帰れなかったのは本当に悪かった。だから今日はパパがお詫びになんでも好きなモン買ってやる」
「……」
「それと晩御飯も好きなモン食おう、な」
「……」
「あと今日はもう遅いから、パパのトコ泊まろう」
「……わかった」
「よーしいい子だ。その代わり、明日帰ったらちゃんとおばあちゃんにごめんなさいするんだぞ」
「うん」
 ようやく素直になった楓を虎徹は軽々と抱きかかえると、様子を見守っていたベンとアントニオを振り返った。
「すんません、ベンさん。今日は上がらせてもらいます」
「おう。ゆっくり親子水入らずすればいい」
「アントニオ。悪かったな」
「おお。今度なんか著れよ」
「安いので頼むわ」
 軽口を叩き合って虎徹はその場を後にする。やれやれ、とため息をつくベンたちのところに、少しずつ遠ざかっていく二人の会話が届いていた。
 
「よし楓、今日は何食いたい?」「あのね、えーっと……ハンバーグ!」「ハンバーグかぁー……よ一しそれじゃあ近くにレストランが……」「パパが作ったやつがいい!」「ええッ!? パパが作るの!?」「うん!」



『……さん、お父さんってば、ちょっと、聞いてる!?』
 怒ったような口調に虎徹ははっと我に返った。
「や、いやいやいや聞いてた、ちゃーんとパパ聞いてたよ?」
『もう、嘘ばっかり。そんなボケーっとした顔して、聞いてないのばればれなんだからね!』
 電話の向こうで楓が眉尻を吊り上げてるのがモニター越しにわかる。
 この電話はあの事件の後、ベンになけなしの給料を前借りして購入したものだ。
 顔を、姿を見られないことが彼女にとってどれだけ辛かったのか――楓の行動によって痛感した虎徹は、せめて声だけでなく、姿が見られるものを――顔を、成長を、見守ることができるものを、と、当時はまだそこまで普及していなかった映像付き電話を自宅と実家に一台ずっ購入したのである。
 そのおかげ力\はたまた彼女がきちんと反省したからなのか、あれ以来一人で前触れもなく訪ねてくるようなことはなくなった。聞き分けの良い子に育ってくれたことが嬉しくもあり、虎徹としては少し寂しくもある。
 まあ、だがあの時思い切って電話を買い換えたおかげで、こうやって電話をかけるたび娘の姿を見ることができるようになったのだ。顔も緩もうというものである。
『……お父さ〜ん?』
 モニターの向こうからジト目で睨まれ、虎徹は思わず居住まいを正した。
「なっ、何かな〜?」
『やっぱり話聞いてないじゃない! もー、知らない!』
「いやいやいやいや! ごめんごめんパパちょっと楓の顔見てたら昔のこと思い出しちゃってねぇ〜!」
『何、昔のことって』
「んーいや、楓がまだ『パパ大好きー!』って言ってくれてた頃かなぁ」
『言ってない! 絶対言ってない!』
「そこまで否定しなくても……」
 思わずしょんぼりする虎徹である。
 すっかりしょげ返ってしまった父親の姿に、流石に楓も悪いと思ったのか小さくため息をつくと先程告げた内容を繰り返した。
『……父の日の。プレゼント送ったからねって、言ったの』
「父の日!」
 途端に虎徹の顔がぱぁっと明るくなった。
「ありがと〜楓〜! お父さん楽しみにしてる〜!」
『はいはい。それじゃ、そろそろ電話切るね。ちゃんとゴハン食べて、あと顔も洗ってね!』
 まるで母親のような小言を残して、通話が途切れる。
 虎徹はまたひとつ大人びた娘の姿に目を細め、そして宅配を知らせるチャイムの音に笑みを浮かべて立ち上がった。


















父の日ネタ。親子いいよね親子。ものすごく捏造したけど。


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