『レイ』
その瞬間、
フェイトを光の帯が包んだ。
○色彩感覚○
「フェイト!!」
しまった、というようなクリフの叫び。
あんなに大量の光線に包まれて、無事では済むまい。
「クリフ!ぼーっとしないで!!」
マリアが叱咤とともに撃ったフェイズガンの一撃は呪紋を放った魔物の頭を正確に撃ち貫いた。
しゅうしゅうと嫌な音を立てて魔物が地に崩れ去る。
呪紋の効果が途切れても、もうもうと上がった土煙は止む気配を見せない。
「……フェイト…」
アルベルの呆然とした呟きが土煙に紛れて消えた。
その時だった。
「………ッげほっ、ゲホッ!!」
「!!フェイト!!」
土煙の中からよろよろと姿を現したのは、紛れもない、フェイトだった。
体中土で汚れ、或いは焼け焦げていたがほかに目立った外傷はない。
「無事だったのね、よかった…」
マリアが安堵のため息をつく。
「うん、なんとかね…」
「おい、大丈夫か!?どこか怪我してるんじゃ…」
「大丈夫だよ、クリ…フ……」
フェイトの言葉がそこで止まる。
そして、愕然としたように、言った。
「……色が……」
「色?」
「色が、見えない……?」
「なっ!?」
フェイト以外の全員が驚きの声をあげる。
「色が…って、オイ!」
「うん…なんだろ、目がかすんで……色が、わかんないんだ。ちょうど大昔の白黒のヴィジョンを見てるみたいな」
「…びじょん…?」
アルベルが疑問の声を発したが、それは全員に無視された。
「…目が、灼かれたのかもしれないわね」
少し考え込むようにしていたマリアが、ふと顔を上げた。
「?どういうことだよ、マリア?」
「大量の光を浴びたせいで、一時的に目の機能が低下してるのよ。ディプロに行けば治せると思うけど…」
「いや、大丈夫。ちょっと見えにくいだけだし、それなら暫くすれば治ると思うしね」
フェイトがごしごしと目をこするのを、クリフが止める。
「おい、本当に大丈夫かよ?念のため戻ったほうがいいんじゃねぇか?」
「大丈夫だって。それにここからディプロに戻んなきゃならないって、結構きついだろ?」
「……フン、ソイツがそれでいいって言ってるんだ、放っておけ」
まるで心配していないようなアルベルに対し、クリフが険を孕んだ目線を向ける。
「……てめぇ」
クリフがそのまま喧嘩モードに入りそうなところを、フェイトの声が遮った。
「あのさ、クリフ」
「…何だ?」
「アルベルはどこ行ったの?」
「…………はぁ?」
気の抜けた声を発したのはほかでもないアルベル本人。
因みに、アルベルはほぼフェイトの正面に立っている。
よほどの近眼でもない限り視界に入っているだろう。意図的に見ないようにしているなら別だが。
「おい、テメェ、とうとうボケたか?テメェの目の前にいるのは誰だ?言ってみろ」
アルベルが更に近づいて凄んで見せるものの
「………ごめん、誰?」
(……本気で言ってるの?)
(記憶喪失にでもなったのか?)
マリアとクリフがまるで別次元の世界を見るような目でフェイトを見る。
「ねぇクリフ、アルベルはどうしたんだよ?」
「いや、だから目の前…」
「あとさ、この人誰?」
「いやだからアルベル……」
「フェイト。貴方の目の前に立ってさっきから貴方を哀れむような悲しむような捨てられた仔犬みたいななんともいえない目で睨んでるのがアルベルよ。間違いなく」
「おいてめぇマリア!」
「間違ってはいないでしょ」
隣にいたクリフが思わず後ずさるような表情で睨むマリア。
黙るアルベル。(逆らえない)
「嘘だ!」
そんなマリアが見えていなかったのか(恐らくは目が霞んでよく見えなかったのだろう)フェイトが突然叫んだ。
「違う!コイツはアルベルなんかじゃない!!」
「テメェ!今すぐここで殺されてぇのか!何を根拠にそう思うってんだ、ああ!?」
「だってプリン色してないじゃないか!!」
「………………」
刺さるような沈黙。
マリアは首だけをぎぎぎ、と器用にフェイトのほうへ向けると、彼女らしからぬ声で尋ねた。
「……フェイト、貴方、アルベルのことどうやって見分けてるの…?」
「勿論!あの鮮やかなプリンヘアーに決まってるだろ!それ以外でどうやってほかの人と見分けるんだよ?」
「他にもいろいろあるでしょう!?絶対冬場では風邪引くに決まってるギャルでもやらないようなヘソ出しとか!男の癖にぎりぎりすぎる生足とか!!」
「おいちょっと待ちやがれ」
「そんなので見分けがつくわけないじゃないか!そう!特にシーハーツ辺りに行ったら他と紛れてわからなくなるだろ!」
そんな風に見えてたのか。コイツには。
今この場にネルがいたら一体どう思ったのだろうか?
「それに比べてあの鮮やかなプリン頭!!あんなの宇宙中巡っても一人いるかいないかだろ!?ルシファーでも敵わないよ!いるとしたらどこかのジャングルだね!!しかも上半身裸で!!」
「いや分かる奴少ないだろそのネタ。お前ガ○ガン読者なのか」
正確に誌名まで言い当てるクリフ。伊達に三十は過ぎていない。
「……わかったわ…」
『何が!?』
アルベルとクリフのステレオな突込みを鮮やかに蹴り倒してから、マリアはフェイトの両肩にぽん、と手を置いた。
「実はね、アルベルは貴方を庇おうとして無謀にも呪紋の中に突っ込んで、哀れ彼の父親のもとへと旅立ってしまったのよ」
「そんな…!!」
「ンなわけあるか!!」
フェイトの悲痛な声とアルベルの(フェイトとは違う意味での)悲痛な叫びが重なった。
「で、今貴方の目の前にいるのはその死んだアルベルの生まれ変わりで、(放送禁止)さん」
「死んでねぇ!!」
「生まれ変わりかよ!!つーか放送できないのかよ!!」
世の中規制も厳しくなってますから。
どうやらマリアも知ってたようです。
「そっか…!!宜しく、(都合により音声を変えております)!!」
「ンなわけねぇだろーがー!!てめぇフェイト、いい加減にしねぇとマジで殺す!!」
(自主規制)(アルベル)がカタナを抜く。刀身がアルベルの怒りを受けてぬらりと光った。
「マリア、(放送コードアウト)は僕と相性が悪いみたいだよ。すっごく殺気とか放ってるし」
「あら、じゃあ仕方ないわね。フェイト、次の生まれ変わりの人がフェイトと好相性なことを望むしかないわ」
「そうか…そうだね。ちょっと辛いけど…」
悲しげに微笑ったフェイトの身体が、少しづつ発光しはじめる。
その背に見えるのは、一対の純白の翼。
「……おいちょっと待てまさか…」
「さよなら、次はもっと仲良くなれるといいねvv」
「ちょっとまったわかった今すぐなる仲良くなる(禁)だろうが何だろうがかまわないからそれだけはよせフェイト!!」
「イセリアル・ブラスト!!(強制終了)」
「……虚しい、戦いだったわ…」
「………いろんな意味でな……」
マリアとクリフが遥か遠くを見つめている。現実からかけ離れた遥か遠くを。
彼らのその後ろには。
もう既に元のプリン色を完全に消失した謎の物体(享年二十四歳)と。
「あ、目、戻ったみたいだな。」
さながら受胎告知のために舞い降りた大天使の如く、白い翼を広げながら地上に降り立ったフェイトの姿があったのだった。
どっとはらい。
END
最初はシリアスかと思いきや最悪なギャグという罠。(罠かよ)
拍手掲載時は伏字にしてました。元ネタは某ジャングルギャグのアニメでフェイトが声やってた人です。(わかるかな?)
奴も見事なプリンだったけど途中から染め直しちゃったんだよねぇ…。
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