ちくちく、ちくちく、背中に刺さる。
好奇と、羨望と、嫉妬の視線。
原因は、僕の隣だ。
○綺麗なお兄さんは好きですか?○
僕が言うのもなんだけど、アルベルは結構モテる。
そりゃ、多少は恋人の贔屓目ってものがあるかもしれない。
けれど、例えばこのゲート大陸でも珍しい夜の月を映したようなツートンカラーの髪は(最初、この星の人間はこういった人種なのかと思っていたけど、どうも違うらしいし)嫌が応にも人の目を引くし、鋭い刃を思わせる紅の瞳で射抜かれたら誰だって動けなくなるだろう。
何より、(これは恋人の贔屓目を抜きにしても)整っているんだ。顔が。
それはもう憎たらしいくらいに。
不機嫌な表情を浮かべていても整っているその風貌。
この美貌に一度でも微笑まれたいと、皆そう思うに違いない。
これでモテないはずがない。
でも、本人にその自覚は全くもってない訳で。
それがまた、憎たらしい。
今もそう。
珍しく街に寄ったかと思えば、珍しく買い物に付き合うなんて言い出した。
まぁ、目的は武器らしいんだけど、その道中が僕にとっては針の筵だ。
今日は休日かなにかなのか、いやに人通りが多い。
その雑踏の中から、ちくちく背中に刺さる、視線。
好奇と、羨望と、嫉妬の視線。
中にはひそひそと話し声まで聞こえてきたりして…
ああ、背中が痛い耳が痛い。
なぁ、誰だって美人が好きなのは分かるからさ。
お願いだから、僕まで巻き込まないでくれ。
「……ちっ」
アルベルが舌打ちしたのを聞いて顔を上げれば、彼はいつも以上に最高級な不機嫌顔を見せていた。
アルベルだって気づかなかったわけじゃないんだ。
でも、原因はお前だろ?
「さっきからじろじろじろじろと……ウゼェんだよ」
「誰のせいだよ、誰の……」
僕が皮肉たっぷりそう言うと、アルベルは「なに言ってやがる」とでも言いたげな視線を寄越してくる。
ああやっぱり気づいてない。
「テメェのせいだろうが……」
「は?」
はい?
アルベルが呟いた瞬間、視界が大幅に左にズレた。
気がつけば僕の左腕はアルベルの右腕に絡め取られていて、それに引き寄せられたんだ、と気づくのに少しかかった。
でも、いや嬉しいけど、何で?
「あ、アルベル?」
「見せ付けてやれば興味も失せるだろうが」
見せ付けてっ……て……
顔が赤くなるのを自覚する。
周りの野次馬(もうそう認めざるを得ない)がざわついたのが分かった。
「見せ付けるって、なぁ!余計目立つだろ!」
「テメェはこうした方が大人しいだろうが」
「はァ?」
まったく意図のつかめない返答に眉をひそめる。
「さっきからキョロキョロそわそわしやがって、目立ってんだよ貴様は。それでなくても好色な連中が目をつけてやがるってのに……少し大人しくしていろ。こうしてりゃそのうち消えんだろ」
アルベルはそれだけ言うとまた不機嫌に歩き出した。
て、ことは何?アルベルはさっきからじろじろ見てるこの視線は僕のせいとでも言いたいわけ?
もう一度言うけど、アルベルはモテる。かなりモテる。
でもやっぱり全然自覚がない。
そこがまた、憎たらしい。
けど今日はもう気にしない。
左腕のぬくもりに埋もれて、僕は少しだけ誇らしくなる。
誰だって微笑まれたい美人。
僕の恋人。
END
アルベル…び、美人…か…?(話の根本をつく疑問)
まあアーリグリフ三軍の団長の中では美人な方なんだろうが…(そりゃ単に若いだけという説も…)
フェイトはまあ、美人というよりかわいーですよね。にこ。
御題→「
携帯サイトで10のお題
」様より
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