「ガラス越しのキス、アリな人?」
廊下のガラスの向こうから、不意に問いかけられた声は耳に心地よく響く低い声。
大概の女性ならそのまま頷いてしまいそうなテノールに、だが問われた帝人は頭を振った。
「ナシです」
「どうして?」
さも愉快そうに窓ガラスの向こうからそう訊ねる声にため息をつきながら、だが律儀に問いかけに応える。
「ひとつ、ガラスは色々な人が触ってて汚いです。ふたつ、する理由がありません。みっつ、……僕も臨也さんも男です」
「つれないね」
心底残念そうな声がガラスを薄く曇らせる。名残惜しそうに離れていく指先を見つめながら、帝人はそっと目を伏せた。
ガラス越しのキスなんて。
触れるのは所詮、透明で冷たいガラス板。
向こう側には触れられない。
雰囲気を味わうだけ、それだけの遊び。
そんなガラス越しのキスなんて。
「でも、それじゃあ納得できないなぁ」
ふと視線を上げると、先程までガラス越しにあった姿が消えていた。
「ひとつ、俺がしたいから。ふたつ、男かどうかなんて関係ないよね?みっつ、」
不意に視界が陰り、帝人が振り返る。その瞬間、くいっと顎を引かれた。
目の前には、先程ガラス越しに見ていた顔。
今はガラス抜きの顔。
「ガラス越しがイヤなら、ガラス越しのキスガラス抜きで、どう?」
すぐ近くで響く心地良いテノールから、帝人はすっと目を逸らす。
その頬を真っ赤に染めながら。
「……断る理由がなくなっちゃったじゃないですか……ズルいですよ、それ」
か細く消え入りそうな返答に、臨也はそっと笑みを深めた。
魔が差してスタドラをオマージュ。ホント魔が差しただけなんだ…
シチュエーションとか年齢設定とかは一切考えていないのでその辺突っ込んだら負けよ。
個人的にスタドラは名(迷?)言が多くてイイと思う。綺羅星!(`・д・´)ゝ
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