「ねェ」

「帝人君は、いつになったら俺を好きになってくれるの?」
「なりません」
「いつになったら俺のモノになってくれるの」
「なりませんよ」

 繰り返される、質問と回答。
 最初はそれでも丁寧だった答えも、だんだんと素気のないソレに変わっていた。
 今はもう、問う者の顔を見ることもない。
 つまらない言葉遊び――からかいの数々に厭きた、けれど本心は。
 振り向けば、別の言葉が口を突いて出かねないと思ったから。

「好い加減、降参してよ」
「しません」
「こんなに好きなのに。泣いちゃうよ?」
「勝手にすればいいじゃないですか」
「知ってるんだよ?帝人君、実は俺のこと凄く好きなんだって事」
「寝言は寝てから言って下さい」

 相手が自分の事を知っているというなら、自分だって相手の事を知っている。
 その口で語る愛がヒトのソレとは違うこと。
 それは単なる『興味』でしかないということ。

 その興味が、今は単に自分に向いているだけという事も。

 手に入れたら、それで満足なんでしょう。
 それで飽きて、棄ててしまうんでしょう。

 好きになったら、ソレが終わりだと分かっているのに、どうして好きになんてなれるというのだろう。

 破滅しかない恋なんて。

「ね、なんでこっち見ないのかな」
「……別に」

 終わらせ方を知っていても、続け方のわからない想い。
 気が狂いそうになる。

「理由なんて、そんなの」

 ――だったら。

 いっそ先に終わらせてしまおう
 この想いに囚われて抜け出せなくなる前に、自分から。

 一瞬の甘い夢を見て、そして覚醒めればいい。
 始まりを終わりの合図にすればいい。

 それなら。

 不意に、すっと帝人が振り返る。
「臨也さん」
 呼び寄せて、誘き寄せて。
「すきだから――みれないんです、よ」
 空虚な言葉を口にして。
 何か言われる前に、先手を打ってしまう。
 ぐっと腕を引いて近付いて、口接ける。
「!」
 驚きに息を呑んだ気配が伝わってきたのもほんの一瞬のこと。
 すぐにふっと息が漏れたかと思うと、ぐいと腰を掴まれた。
「っ!」
 ざらりとした違和感が唇を撫でる。
「う、っ」
 ぞくりと背筋を撫でる、力が抜けたその隙をついて違和感が唇を割って中へと押し入ってくる。
 逃げようにも回された腕がしっかりと身体を抱きこんでいて、身動きもままならない。
「ふ、っ――んっ……」
 くちゅ、と耳の奥に冷たい音がいやに響く。息が詰まって、頭が朦朧としてくる。
 ようよう唇が離れて息を吐いて、それでも離れない身体に小さく身じろぎをすると、上から声が降ってきた。
「これは」
 艶めいた声に顔を上げると、笑みに細められた瞳と目が合った。
「応えてくれたって事で良いのかな?」
 答えは――ない。
 ただ、にこりと笑顔を向けただけ。
 次の瞬間どんっ、と寄せていた身体を突き飛ばす。
 衝撃に数歩たたらを踏んで、それでもきっと顔を上げる。
 驚きに目を瞠るその顔を真っ直ぐに見つめて、そして言った。

「さようなら」

 始まってから、僅か一分。
 その恋は、そこで終わった。



 ――はず、だった。

 逃げるようにその場を去った後ろ姿を、追いかけるでもなくただ見送る。
 その目に浮かんでいたのは、
「……さよなら、だって」

 ――歓喜。

 くつくつと、喉の奥で笑いを噛み締める。
「まるでこれで終わりみたいな言い方だね?」
 折角始まったばかりだというのに。

 相手が自分の事を知っていると思っている以上に、自分は自分の事を知っている。
 その口で語る愛がヒトのソレとは違うこと。
 この感情が人間全てに向ける愛とは違うこと。

 それは『執着』だということ。

「帝人君。俺はね……一度気に入ったものをむざむざ手放すような真似はしない」

 そして相手が自分の事を知っていると思っている以上に、相手が自分をどう想っているかを知っている。
 一体何を考えて、あんな行動に出たのかも。

 手に入れたら、飽きて棄てる?
 とんでもない。
 それは放逐という名の自由というのだ。

「俺は、手に入れたら檻の中で飼い殺すタイプなんだよ」

 文字通りね。

 その言葉を向けられた誰かは、今はまだ逃げ続けている。
 心に鎖を絡めたままで。

















前半の掛け合いがggrks(がくルカの)
割とアタシの中の臨帝の構図そのまんまって感じで。
久々にこういう書き口で文章書きマシタ。
こういう支離滅裂な文章は書いてて楽しいけど読みにくいな!



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